美しい物語

同じ紡ぐなら、美しい物語を紡ぎたい。

この業界に2年目くらいだっただろうか、今の会社に入社してしばらくした時に担当させてもらったお客さんのことをふいに思い出した。

樟葉のクライアントさん。Lotusを利用している自社システムを刷新したいという話がうちの会社に回ってきた。

ここを改善したいんです、負担を減らしたいんです、担当者の方が熱心に語っていたのを思い出す。

このシステムを使う人に負担になるのではなく、助けるものを作りたい。

私も強くそう思った。なぜだかは判らないが、もともと熱くなりやすい私、彼の熱意に押されたのだと思う。

その一心で、慣れないシステムの設計をした。その次には、どうやったら設計の概要を判って頂けるか、一生懸命考えて資料を作成し、プレゼンテーションで喋った。

結局は予算の折り合いがつかず話は流れてしまった。流れてしまった話なんてたくさんあるのに、この一件だけはやけに印象深く、強く強く心に残っている。

樟葉は毎週通っていた吹きガラスに通うのに使っていた京阪の沿線上にあるので、樟葉を通り過ぎるたびに思い出していたくらいだ。でもこれほどはっきりと思い出したのは、初めてだ。

最近、思うように設計ができていないと愚痴る自分に喝を入れるためだろうか。そうだ、私は設計者として、エンドユーザのユーザビリティを守るため、もっと戦わなくてはいけなかったんだ。

今の仕事の原点のような出来事だったんだと思う。

大切にしよう。